【川崎強靭化計画】激甚災害に備えるために

【川崎強靭化計画】激甚災害に備えるために

はじめに

東日本大震災から6年が経過した。私は震災以前から親交のあった福島県相馬市へは、この間10回は伺っているだろうか。今年4月1日には福島県飯舘村は避難解除となり、全村帰村が可能となる。しかし、災害が分断したものは、失った命は言わずもがな、年月と共に、コミュニティ、家族、仕事、家や畑や家畜などの資産など、計り知れず、何より、ずっと心を分断されたままの方もある。まだまだ課題は文字通り山積で、原発による放射能除去に出口は見えず、避難解除とはなったものの、川崎市の3倍はある敷地面積を有する飯舘村に帰村する人は僅かしかいない。相馬市にあった仮設住宅で、そんな飯舘村の方々とも親交を持たせて頂いた。 また、消防団員の息子さんが住民を救おうとして津波に飲み込まれてしまったというお母さんとも親交を持たせて頂いり、相馬市の職員はじめ、多くの方々から、激甚災害の発災直後の対応、その後の対策、緊急対策から復興へ、復興の道程、等々を学ばせて頂いた。その中で陣頭指揮に立つ、立谷秀清市長からは、本当に多くを学ばせて頂いている。彼はマニフェスト大賞を受賞した。彼のビジョン、そしてそのビジョンを実現するリーダーシップと決断力、実行力は、尊敬の域を超える。 物理学者であり随筆家である寺田寅彦は「困ったことに『自然』は過去の習慣に忠実である。地震や津波は新思想の流行等に委細構わず、頑固に、保守的に、執念深くやってくる」としている。国土強靭化基本法の産みの親である京都大学教授・藤井聡氏の記事を以下に掲載するが、今、川崎市に住む私たちは、首都直下型および南海トラフ地震のリスクが如何に高いかを、先ず前提として頭に叩き込む必要がある。 また、年々激甚化している降雨災害についてもその被害想定を頭に叩き込む必要がある。そして最悪なそれらの複合災害についてもリスクマネジメントしておかなければならない。
災害は来る。その前提で備えなければ、助かる命も救えない。幸いまだ川崎市では起きていないのである。備える時間はある。リスクを考察し備えるために、以下考察する。相馬市での学びに基づき、相馬市で出会った皆さまに感謝と尊敬を込めながら。

 

 

第1章 東京強靭化必ずやってくる「巨大地震」に備えよ

“東京強靭化”は五輪成功のために必要不可欠だ

 

死者は32万人にも及ぶ
いまわが国は、巨大地震【メガクエイク】による、おおよその国民の想像を超絶してはるかに上回る激甚被害の危機に直面している。
南海トラフ地震、そして首都直下地震である。
政府は2013年3月に、南海トラフ地震について、科学的な推計に基づき、東日本大震災をはるかに上回る規模の被害が生ずる可能性を公表している。すなわち、マグニチュード(M)9.1の地震が起きると、最悪クラスで220兆円程度の経済被害が出るとの想定を発表している。これは国内総生産(GDP)の42%に相当する水準であり、死者も32万人に及ぶと公表されている。
想定被災地には日本経済の中枢を担う大コンビナートがあり、そこが激甚被害を受ければ、その一帯に集中して立地している火力発電所が軒並み使用不能となり、日本全体が深刻なエネルギー危機に陥ることが危惧される。同様に、コンビナートに立地するさまざまな巨大工場が軒並み被災し、日本の産業力を激しく毀損することともなる。そうした毀損は、それ以後、長い日本経済の大きな低迷状態へと結びついていくこととなろう。つまり三大都市圏における巨大被害によって、日本経済は長期的な「震災不況」と呼ぶべき状況に陥ることも十二分以上に予期されているのである。
一方、被災地では700万人から1000万人にも及ぶ被災者が生じ、彼らに対する医療、食料、水、燃料等についての深刻な「不足」状況が訪れる。その不足ゆえに、直接の被災を免れた多くの被災した方たちや負傷者の多くの命が失われていく。そんななか、政府は必死になって国内で食料等をかき集め、被災地に届けようとするだろう。しかしそうなれば、被災地以外でも「食料不足」が生ずるケースが続出することもあろう。
つまり、こうした巨大地震は、被災地においては文字どおりの「地獄」を、そして、非被災地においてはエネルギー不足や長期的な震災不況の発生等による想像を絶する混乱状況をもたらすものなのである。
東日本大震災は「国難」と呼ばれる大災害であったが、この次に訪れるであろう首都直下地震や南海トラフ地震は、それらが襲いかかる地域が日本経済の中枢部であることもあり、被害の程度は、数倍から10倍、20倍程度にまで拡大することが予期されているのである。東日本大震災を国難と呼ぶなら、これから訪れるであろう巨大地震は、文字どおりわが国を潰しかねぬほどの、究極的な未曾有の巨大被害をもたらすものなのである。

日本列島は「地震活動期」に突入した。
一方、そうした巨大地震が発生する可能性そのものについては、上記の最大規模のものも含めたマグニチュード8以上の規模に関していうなら、今後30年間で60~70%と公表されている。ただし、南海トラフ地震のなかでももっとも発生する見込みが高いといわれている東海地方の地震(東海地震)については、その発生確率は88%にも上るという参考値も公表されている。
これは口語的にいうなら、「十中八九」の水準で南海トラフ地震が30年以内に起こることを意味している。
一方、首都直下地震については、昨年暮れに、その被害想定が公表された。マグニチュード7の巨大地震の30年以内の発生確率は70%、その被害も、100兆円程度(約95兆円程度)という水準が公表されている。
こうした巨大地震については、以上の「政府の公式発表」以外にも、客観的な事実に基づいたさまざまな指摘がなされている。  まず、マグニチュード9にも及ぶ東日本大震災が起こったいま、多くの科学者が、いまの日本列島は「地震静寂期」ではなく、大地震が集中的に訪れる「地震活動期」のただ中に突入していることを指摘している。
この「地震活動期」というものは、過去の日本の歴史のなかでも定期的に訪れている。
たとえば、表1をご覧いただきたい。東日本の太平洋沖で発生するマグニチュード8クラス以上の巨大地震は、この表に示すように、過去2000年のあいだに「4回」起こっているが、それらはいずれも、日本列島の各地で大地震が起こる「地震活動期」のただ中で起こっている。その「4回」のうち、すべてのケースにおいて、首都圏では10年以内に大地震が起こっており、しかも、西日本で18年以内に大地震が起こっている。そして、その西日本の4回の大地震のうち、3回がいわゆる南海トラフであった(残りの1回は、観測史上最大の内陸型地震である濃尾地震であった)。
この結果をもってして即座に、首都直下地震が10年以内、南海トラフ地震が18年以内に今回も起こるだろうと結論づけることはできないとしても、3.11の東日本大震災の直撃を受けた今日のわが国日本が、いかに危険な状況にあるのかを明確に指し示すものであることは間違いない。つまり、東日本大震災の直撃を受けたわが国日本が近い将来に、さらなる巨大地震として首都直下地震と南海トラフ地震の「連発」に苛まれる可能性は、何人たりとも否定できないものなのである。むしろそれどころか、過去の歴史を振り返れば、そうなる可能性は十二分以上に考えられるほどの、起こったとしても至って当たり前の必然事象だとすら、いいうるものなのである。

地震発生を「織り込んだ」国家事業が必要
これらの議論を踏まえるなら、われわれはこうした巨大地震の発生を「覚悟」すべきであることは明白だ。したがってこれから長期的な計画や政策を考えるにおいては、こうした巨大地震の発生を「織り込んでいく」姿勢が、是が非でも求められている。
たとえば、東京・名古屋間のリニア新幹線開業が、2027年、いまから13年後に予定されている。多くの国民は、それまでのあいだに、東海道新幹線が被害を受けるような「南海トラフ地震」が発生するかもしれない、というイメージをもっていないのではないかと思う。
しかし、南海トラフ地震の13年以内の発生確率は、公表値に基づいて推計すると(注:ポアソン過程という確率モデルを想定)、おおよそ30~40%程度となる。しかも、南海トラフ地震のなかでも、東海道新幹線に直接被害をもたらす可能性が危惧されている「東海地震」に関しては、より高い確率(30年確率88%)で起こると公表されていることから、それを踏まえると、「6割程度」という水準になる。
さらにはいま、アベノミクスの第三の矢の「新たな成長戦略」として「日本再興戦略」が策定されているが、そこでは、2030年、すなわちいまから16年後が戦略の目標年次として想定されている。しかしその年次までにいずれか一方の巨大地震が発生する確率は60~70%、東海地震を想定するならじつに85%という水準となるのである。
このような科学的なさまざまな指摘を踏まえるなら、2030年を目標年次とする「日本再興戦略」や2027年のリニア新幹線といった、重要な大国家事業はいずれも、「巨大地震」の発生を十分に「織り込んだ」ものとして構想されなければならないのは、ほとんど常識の範疇に入る当たり前のことなのである。

 

 

 

 

第2章  南海トラフ巨大地震首都直下地震等 大規模災害に対する取組

 

我が国は,既に述べたように,地震,津波,火山,風水害等様々な災害を受けやすい。そのため,常にあらゆる災害に備える必要がある。特に大規模な災害の場合,第1章の教訓にあるように,災害対応に想定外はあってはならず,楽観的な想定ではなく,悲観的な想定を行う必要がある。

現在,南海トラフの巨大地震,首都直下地震,広域的に影響を及ぼす火山噴火,大規模水害等が発生した場合には,東日本大震災と同等かそれを上回るような大きな被害が生じる可能性がある。このため,中央防災会議において「防災対策の充実・強化に向けた当面の取組方針」が決定され,特に速やかに取り組むべきものとされている。

1 南海トラフの巨大地震

 

南海トラフの巨大地震対策の必要性
駿河湾から九州にかけての太平洋沖のフィリピン海プレートと日本列島側のユーラシアプレート等の大陸側のプレートが接する境界に南海トラフは形成されている。南海トラフでは,100年から150年程度の周期でマグニチュード8クラスの海溝型地震が発生しており,東海,東南海,南海地震の三つの震源域が同時あるいは一定の時間差をもって動くことによる地震が過去生じている。

近年では,安政元年(1854年)に安政東海地震と安政南海地震が,昭和19年(1944年)に昭和東南海地震が,昭和21年(1946年)に昭和南海地震が発生している。このため,東海地震については158年間の空白があり,また,東南海・南海地震については前回地震から60年余りが経過していることから,今世紀前半にもこの地域での地震の発生が懸念されている。

(最大クラスの地震・津波の考え方
従来の南海トラフで発生する大規模な地震の想定は,過去に発生した地震と同様な地震に対して備えることを基本として,過去数百年に発生した地震の記録を再現することを念頭に地震モデルを構築してきた。しかし,地震・津波対策専門調査会の考え方に基づき,最大クラスの地震・津波について検討を進めていくことが必要となった。これにより,これまでの科学的知見に基づき想定すべき最大クラスの対象地震の設定方針を検討するため,内閣府に「南海トラフの巨大地震モデル検討会」を設置した(平成23年8月)。

検討会においては,まず,南海トラフで発生した過去の地震について,古文書調査,津波堆積物調査,遺跡の液状化痕跡調査及び地殻変動調査をもとに検討し,その結果,宝永4年(1707年)の宝永地震時を上回る津波が2000年前に発生している可能性がある一方で,現時点の資料では,過去数千年間に発生した地震・津波を再現しても,それが今後発生する可能性のある最大クラスの地震・津波とは限らないことも明らかとなった。

このため,地震学的知見を踏まえ,あらゆる可能性を考慮した巨大地震モデルを構築することとした。具体的には,プレート境界の形状等の断層モデルに係る科学的知見を踏まえ,最大クラスの想定震源断層域を設定することとした。  この考え方に基づいて,平成24年3月の中間取りまとめでは,南海トラフの巨大地震の新たな想定震源断層域を設定し,中央防災会議が平成15年に公表した従前の東海・東南海・南海地震の想定震源断層域よりも大きく拡大することとなった。

 

2 首都直下地震

(首都直下地震対策の必要性)
首都圏において,大規模な首都直下地震が発生し,政治,行政及び経済の中枢機能に障害が生じた場合,我が国全体にわたって国民生活及び経済活動に支障が及ぶとともに,海外への被害の波及が懸念される。

また,首都圏に集中している膨大な人的・物的資源への被害も懸念されるところである。

(最大クラスの地震の考え方)
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」(平成15年5月〜平成17年7月)では,18パターンの首都直下地震を想定し,切迫性が高い地震であること,都心部の揺れが強いこと,震度6弱以上の強い揺れの分布が広域であること等から,北米プレートとフィリピン海プレートとの境界で発生する「東京湾北部地震」を中心に被害想定及び対策の検討を行った。

しかし,南海トラフの巨大地震と同様に,地震・津波対策専門調査会の報告書の考え方を踏まえ,これまで想定対象としてきたマグニチュード7クラスの地震の検証・見直しを行うとともに,相模トラフ沿いで発生する規模の大きなマグニチュード8クラスの地震も想定対象に加えることとした。これらの検討を行うために,内閣府に「首都直下地震モデル検討会」を設置(平成24年5月)し,平成24年秋頃には新たな震度分布・津波高をまとめる予定としている。

 

 

 

第3章 東日本大震災の被害状況

被災地の復旧と復興に向けた取組

 

東日本大震災の被害状況
ここでは,東日本大震災について,昨年の防災白書の記述以降の状況変化や新たに判明した被害状況を中心に記述する。

東日本大震災をもたらした「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(気象庁が命名した地震名。以下「東北地方太平洋沖地震」という。)は,マグニチュード9.0という我が国の観測史上最大の地震であり,世界でも1900年以降4番目の巨大地震であった。震源域は岩手県沖から茨城県沖まで及び,長さ約450km,幅約200kmの断層が3分程度にわたり破壊されたものと考えられている。そのため,広範囲に揺れが観測され,また大津波が発生し,被害は広域にわたった。

(注:平成23年4月1日の閣議了解により,東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害を「東日本大震災」と呼称することとされた。)

人的被害
東日本大震災では,死者・行方不明者は12都道県でみられ,死者1万5,859人,行方不明者3,021人(平成24年5月30日警察庁発表)という明治以降では大正12年(1923年)の関東大震災(死者・行方不明者:約10万5,000人),明治29年(1896年)の明治三陸地震(同:約2万2,000人)に次ぐ極めて深刻な被害をもたらした。

また,別途,復興庁等が各地方公共団体の協力を得て,東日本大震災による負傷の悪化等により死亡した者で,「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき災害弔慰金の対象となった者(実際には支給されていない者も含む。)について把握したところ,10都県で1,632人であった(平成24年3月31日時点)。なお,当該数値は,警察庁発表の死者数と一部重複している可能性がある。

 

住家被害
住家についても,全壊は10都県で発生し,その数約13万棟,半壊は13都道県で発生し,その数約26万棟となる大きな被害が生じた。

 

液状化被害
国土交通省の調査(平成23年9月27日時点)によれば,東北から関東にかけた9都県で約2万7,000件の液状化による宅地被害が発生した。

国土交通省関東地方整備局及び公益法人地盤工学会の「東北地方太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明」によれば,関東地方整備局管内9都県のうち7都県96市区町村で液状化が発生している。

図表1-1-4によると,液状化は東京湾岸の京葉間及び利根川下流域に集中し,それ以外では川崎・横浜方面,那珂川や久慈川方面,利根川中流,鬼怒川・小貝川流域及び古利根川流域に散在している。東京湾岸については,液状化発生地域はおおむね明治以降の埋立地と一致している。

 

東京湾岸の比較的新しい埋立地は,震源からの距離が400km近く離れているにもかかわらず,非常に広い範囲で液状化が発生しており,住宅の沈下・傾斜等の甚大な被害が発生した。(図表1-1-5)

 

また,液状化の被害が大きかった地域においては,電柱等の沈下や傾倒,下水道等の地下構造物の損壊,マンホールの抜上り等の被害が発生した。

 

長周期地震動の影響
地震動は,短い周期の揺れと,ゆっくり繰り返す長い周期の揺れ等様々な周期で構成される。長周期地震動は後者を指し,高層ビルや,石油タンク,長大橋梁等の長大構造物は,周期数秒から十数秒の固有周期を有するため,大地震に伴って発生する長周期地震動と共振することによって大きな揺れを生ずることがある。東北地方太平洋沖地震では,長周期地震動によって,首都圏や大阪府等で,高層ビル等において大きな揺れが観測された。

大阪府庁の咲洲庁舎においては,約10分間の揺れが生じ,最上階(52階)では,最大1m(片側)を超える揺れが確認された。内装材や防火戸等の一部で破損が見られたほか,エレベータの停止や閉じ込め事象が発生した。なお,机・棚等は固定されていたため,これらの転倒・移動による被害は認められなかった。

東京都内の34棟の高層ビルにおける内装材の破損や家具,什器等の移動・転倒について,気象庁が行った聞き取り調査は図表1-1-6のとおりであるが,多くの高層ビルで,内装材に亀裂が生じる等の軽微な損傷が認められた。また,高層ビルの低層階と高層階との揺れの違いについては,高層階になるにつれ,人が行動することが困難になったり,本棚や車輪付き什器等の動きが大きくなるといった傾向が認められた(図表1-1-7)。

 

 

市町村庁舎の被災
東日本大震災で震度6弱以上を観測した8県では,352市町村のうち237市町村の庁舎が被災した。このことで,災害応急対策活動への支障(支援物資の配給等), 住民基本台帳等のデータ紛失, 行政サービスへの支障(義援金の配給等)等が発生した。

 

 

 

 

第4章 平成28年熊本地震

熊本地震の概要

 

地震の概要
4月14日21時26分、熊本県熊本地方においてマグニチュード6.5の地震が発生し、熊本県益城町で震度7を観測しました。また、16日1時25分にはマグニチュード7.3の地震が発生し、益城町及び西原村で震度7を、熊本県を中心にその他九州地方の各県でも強い揺れを観測しました。震度7の地震が同一地域で連続して発生するのは震度7が設定された1949年以降初めてのことです。これらの地震だけでなく、その後も熊本県から大分県にかけて地震活動が活発な状態となり、7月14日までに、震度7を2回、震度6強を2回、震度6弱を3回、震度5強を4回、震度5弱を8回観測するなど、震度1以上を観測した地震は合計1888回発生しました。地震発生から2ヶ月程度経過した6月中旬にも、震度5弱の地震が発生(6月12日)するなど地震活動は継続しています。

熊本城 地震の被害

 

被害の概要
熊本地震の人的被害は、7月14日時点で、死者55人、負傷者1814人。熊本県内では、地震後には18万人を超える方々が避難し、7月13日現在も約4700人の方々が避難生活を送っています。物的被害は、全壊約8300棟、住家被害計が16万棟。加えて、最大約45万戸断水、約48万戸停電、約11万戸ガス供給停止となり、交通網も道路・鉄道・空路が一時不通になるなど、大きな被害が発生しました。

熊本市街地震の被害

 

政府の対応

 

対応体制
政府は、4月14日21時26分の地震発生直後に総理官邸に官邸対策室を設置し、緊急参集チームを招集しました。また、総理大臣から、「①早急に被害状況を把握すること、②地方自治体とも緊密に連携し、政府一体となって、災害応急対策に全力で取り組むこと、③国民に対し、避難や被害等に関する情報提供を適時的確に行うこと」との指示がありました。22時10分には、内閣府に河野防災担当大臣を本部長とする非常災害対策本部を設置し、22時21分に総理大臣出席の下で第1回非常災害対策本部会議を開催しました。

さらに、現地の被害状況を詳細に把握するため、23時25分に内閣府情報先遣チームを熊本県庁へ派遣し、翌朝15日に松本内閣府副大臣を本部長とする非常災害現地対策本部を設置しました。国・県合同災害対策本部会議を重ねて開催するとともに、政府の非常災害対策本部に、テレビ会議を通じて県知事や現地対策本部長も参加し、地方自治体と一体となって応急対策を進めてきました。また、17日には熊本地震被災者生活支援チームを立ち上げ、被災者の方々の多様なニーズに基づいた生活支援を行いました。

 

 

 

第5章 阪神・淡路大震災教訓情報資料集阪神・淡路大震災の概要

(出典:「防災白書」、「阪神・淡路大震災について(確定報)」)

 

平成7年1月17日5時46分、淡路島北部の北緯34度36分、東経135度02分、深さ16kmを震源とするマグニチュード7.3(※)の地震が発生した。この地震により、神戸と洲本で震度6を観測したほか、豊岡、彦根、京都で震度5、大阪、姫路、和歌山などで震度4を観測するなど、東北から九州にかけて広い範囲で有感となった。また、この地震の発生直後に行った気象庁地震機動観測班による被害状況調査の結果、神戸市の一部の地域等において震度7であったことがわかった。
(※)平成13年4月23日の気象庁「気象庁マグニチュード検討委員会」結果によりマグニチュード7.2から修正。

地震の被害

 

各地の震度

出典:神戸市消防局ホームページ 阪神・淡路大震災地震の概要より

 

この地震は、内陸で発生した、いわゆる直下型地震である。破壊した断層付近で非常に大きな揺れを生じ、神戸市を中心とした阪神地域および淡路島北部で甚大な被害を受けた。神戸市中央区の神戸海洋気象台では、最大加速度818gal(南北成分)を観測した。各地の最大加速度値を以下に示す。

各地の気象台で観測した最大加速度値

淡路島北部では、今回の地震によって新たに生じたと思われる断層の露頭が認められた。淡路島から神戸、西宮にかけては無数の活断層が走っており、このうち、野島断層(淡路島北部)に新たな断層のずれが生じたことが確認された。
気象庁はこの地震を、「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」と命名した。
さらに政府は、今回の災害の規模が特に大きいことに加え、今後の復旧・復興施策を推進する上で統一的な名称が必要となると考えられたことから、災害名を「阪神・淡路大震災」と呼称することを平成7年2月14日に閣議口頭了解した。

この災害による人的被害は、死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名という戦後最悪の極めて深刻な被害をもたらした(消防庁調べ、平成17年12月22日現在。)。

施設関係等被害の概要について、住家については、全壊が約10万5,000棟、半壊が約14万4,000棟にものぼった。
交通関係については、港湾関係で埠頭の沈下等、鉄道関係で山陽新幹線の高架橋等の倒壊・落橋による不通を含むJR西日本等合計13社において不通、道路関係で地震発生直後、高速自動車国道、阪神高速道路等の27路線36区間について通行止めになるなどの被害が発生した。
ライフライン関係では、水道で約123万戸の断水、下水道で8処理場の処理能力に影響が生じ、工業用水道で最大時で289社の受水企業の断水、地震直後の約260万戸の停電、都市ガスは大阪ガス(株)管内で約86万戸の供給停止、加入電話は、交換設備の障害により約29万、家屋の倒壊、ケーブルの焼失等によって約19万3,000件の障害が発生するなどの被害が生じた。  公共土木施設関係では、直轄管理河川で4河川の堤防や護岸等に32箇所の被害、府県・市町村管理河川で堤防の沈下、亀裂等の被害、西宮市の仁川百合野町において地すべりにより34名の犠牲者が生じるなどの被害が発生した。
農林水産業関係の被害については、農地、ため池等の農業用施設など各施設において甚大な被害が発生し、その被害総額は900億円程度であった。

地震の被害と震度

 

 

 

第6章 気候変動に関する指標の動向

気候変動に伴い予想される災害の激甚化

 

気候変動に関する指標の動向

 

(1)世界的な地球温暖化
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)によれば、将来、温室効果ガスの排出量がどのようなシナリオにおいても、21世紀末に向けて、世界の平均気温は上昇し、気候変動の影響のリスクが高くなると予測されている。

過去に観測された指標のトレンドからは、気候システムの温暖化には疑う余地がない。たとえば、1850年以降の世界平均の地上気温や、1900年以降の海面水位については、いずれも顕著な上昇を示している。特に、1950年代以降に観測された変化の多くは、数十年から数千年間にわたってきわめて大きなものである。

同様に、他の指標を見てみると、北半球の春の雪氷面積は減少し、北極域の夏の海氷面積も減少していることが見て取れる。今後の気候モデルの予測には幅があるものの、気温上昇や海面上昇が続くことが予測されている。

 

気候モデル予想

 

北半球積雪面積の変化

 

我が国における気候変動の観測結果

 

1 年平均気温
気象庁の解析による日本における経年変化は以下のとおりである。 1898~2014年において、100年あたり1.14℃上昇している 日最高気温が35℃以上(猛暑日)の日数は、1931~2014年において増加傾向が明瞭に現れている。

年平均気温

2 降水量
同様に、降水量は以下のとおりである。 ・日降水量100mm以上、200mm以上の日数は1901~2014年において増加している ・一方で、日降水量1.0mm以上の日数は減少している

降水量

 

我が国における気候変動の将来予測

1.年平均気温
現在気候(1984~2004年平均)と比較した全国の年平均気温の将来気候(2080~2100年平均)は、以下のとおり予測されている。
・現状以上の温暖化対策をとらなかった場合は4.4(3.4~5.4)℃上昇
・厳しい温暖化対策をとった場合は1.1(0.5~1.7)℃上昇

2.降水量
地域気候モデルの予測結果によると、今後も比較的高水準の温室効果ガスの排出が続いた場合、短時間強雨の頻度がすべての地域で増加する一方で、無降水日数(日降水量1.0mm未満の日数)の頻度も多くの地域で増加すると予測されている。

.降水量

 

自然災害への影響

 

上述のとおり、地球温暖化が進行し、気温が上昇することで、大気中に含まれる水蒸気量が増加することから、降水強度が増加すると予測されている。
洪水を起こしうる大雨事象が日本の代表的な河川流域において今世紀末には現在に比べ有意に増加し、同じ頻度の降水量が1~3割のオーダーで増加することについて、多くの文献で見解が一致している。
強い台風の発生数、台風の最大強度、最大強度時の降水強度は現在と比較して増加する傾向があると予測されている。なお、長期的には西太平洋域における台風の発生数は多少減少する。  このように降水強度が増すことで、現在、たとえば「300年に1度」の頻度で発生する豪雨が、「100年に1度」の頻度で発生するようになるなど、これまでの想定に比べて高頻度化することが予測されている。
また、沿岸部(海岸)において、現時点においても強い台風の増加等を踏まえた高潮等の浸水による背後地の被害や海岸侵食の増加が懸念されている中、気候変動に伴う強い台風の増加等による高潮偏差の増大、波浪の強大化及び中長期的な海面水位の上昇により、さらに深刻な影響が懸念される。
このほか、短時間強雨や大雨の増加に伴う土砂災害の発生頻度の増加、突発的で局所的な大雨に伴う警戒避難のためのリードタイムが短い土砂災害の増加、台風等による記録的な大雨に伴う深層崩壊等の増加が懸念される。

自然災害への影響

 

高まるハザードと社会の脆弱性の変化

前項で予測を示したとおり、今後、特に風水害における災害外力(ハザード)が高まることは疑う余地がない。

ただし、受ける被害は外力の強さのみに依存するものではなく、これらを受け止める我が国社会の「脆弱性」の変化を考慮する必要がある。つまり、インフラ整備や一人一人の防災意識の向上によって災害リスクを軽減できる一方で、高齢社会の進展や都市化によって脆弱性が高まり、災害リスクが増大することも考えられる。

災害リスク図解

 

既存想定を超える災害の激甚化

上記のとおり、今後、さらに気候変動の影響の増大により、施設の能力を上回る外力による水害の頻発、発生頻度は低いが施設の能力を上回る外力による大規模な水害の発生が懸念される。

すなわち、既存の想定を上回る豪雨等の高頻度化により、従来の対策で「安全」「守れる」とされてきたものが通用しなくなる深刻な問題が生じる恐れがある。

現在、過去の大規模水害を踏まえた流量等を想定した計画に基づいて、堤防等の整備を進めて

大規模水害対策

(大規模水害対策の必要性)
平成17年8月末にアメリカ合衆国南東部を襲った大型のハリケーン,カトリーナによる災害では,ニューオーリンズ市域の約8割が浸水し,浸水期間は約1か月半に及んだ。被災建物は約30万棟に及び,約1,800人が亡くなるとともに,通信,電力を始めとするライフライン,教育施設,医療機関等社会基盤の多くが被災した。また,平成20年のサイクロン・ナルギスやハリケーン・グスタフ,平成21年の台風第8号(莫 土偏に立 克(モラク)台風)による台湾での水害,平成23年のタイの水害等,近年世界的に大規模な水害が多発している。

我が国においても,短時間強雨の発生頻度が増加傾向にあり,更に,地球温暖化による大雨の頻度の増加や海面水位の上昇,極めて強い台風の発生等防災面から懸念される予測が出されている。

これまで,治水施設等の整備は着実に進められてきており,相当程度の洪水までは対応できるようになってきているが,現段階では治水施設等は整備途上であり,大規模な洪水等により被災する可能性が常に存在している。加えて,高齢化社会の到来により災害時要援護者の増加,旧来型の地域コミュニティーの衰退,水防団員の減少等,地域防災力が低下し,氾濫した場合の備えがますます重要になってきている。

さらに,首都圏は,利根川や荒川等大河川の洪水氾濫や高潮氾濫が発生した場合の浸水区域に存在し,東京湾周辺にはゼロメートル地帯が広がっており,それらの地域には政治,行政及び経済機能が集積している。そのため,大河川の洪水氾濫や高潮氾濫が発生した場合には,甚大かつ広域的な被害が想定される。

(大規模水害対策の現状等)
このような状況を踏まえ,首都圏において甚大な被害の発生が予想される利根川及び荒川の洪水並びに東京湾の高潮による氾濫を対象とし,大規模な水害が発生しても被害を最小限にとどめる対策を検討するため,中央防災会議の下に「大規模水害対策に関する専門調査会」(以下「大 規模水害専門調査会」という。)を設置した(平成18年6月)。

大規模水害専門調査会は,平成22年3月までに20回開催され,これまでに利根川・荒川流域の氾濫地形の把握や氾濫形態の類型区分,詳細な排水計算モデルの構築を行い,洪水氾濫時の浸水想定を公表するとともに,国内では初めて洪水氾濫による死者数,孤立者数等の人的被害の想定や,超過洪水(約1000年に1度の発生確率の洪水)時の被害想定等を行った。また,平成21年1月には,荒川堤防決壊時における地下鉄等の浸水想定について結果を取りまとめ公表した。

国土交通省においては,平成21年4月に,東京湾沿岸の現時点での高潮防護能力の検証及び長期的な気候変化に対するリスクの把握を目的とした高潮浸水想定を公表し,その後,被害想定の検討を実施した。

(現在の取組)
大規模水害専門調査会での被害想定結果や過去の大規模水害時の状況等を踏まえ,膨大かつ広域にわたる被災者の発生への対応は,河川管理施設等のハード対策と適時・的確な避難を中心とするソフト対策を組み合わせて実施する必要がある。広域的な水没の危険に備えて,円滑な避難誘導が可能となるよう,地方公共団体と国等との連携のもと,避難シナリオや避難計画の策定を進めるとともに,広域避難の実施体制を整備する必要がある。

また,逃げ遅れた者の被災回避,孤立者の救助・救援,災害時要援護者の被害軽減,地下空間,病院等における被害軽減,住民や地域の防災力の向上,公的機関等の業務継続性の確保,ライフライン・インフラの浸水被害による影響の軽減と早期復旧,氾濫拡大の抑制と排水対策の強化等について,首都圏における大規模水害対策に関する大綱等を取りまとめることとしている。

 

 

 

第7章 川崎市地震被害想定調査結果の概要

 

 

 

 

 

 

 

第8章 国土強靭化計画 地域計画

川崎市の気象概況

 

川崎市の洪水(河川の氾濫)

 

川崎市の土砂災害(崖崩れ)

 

 

 

 

第9章 国土強靭化計画 地域計画 2

 

 

 

 

 

 

第10章 吉沢章子提言

吉沢章子の視点

 

川崎強靭化・多摩区強靱化について

平成28年3月9日予算審査特別委員会において川崎強靭化・多摩区強靱化について質問し、政策提言をした。以下記載する。

吉沢章子
かわさき10年戦略では、みんなで守る強くしなやかなまちをめざすとして、国土強靭化・地震防災戦略の推進で16億7,321万3,000円が計上されている。
最悪のシナリオを想定することによって最悪の事態を回避し、結果、命を守るということが国土強靭化計画の肝である。
①多摩区おける最悪のシナリオとは何か?
②最悪のシナリオ回避のために必要なことは何か?
③多摩区役所防災力向上方針とは何か?

多摩区長
①多摩区の被害特性について
多摩川や二ヶ領用水などの河川が流れる平野部と多摩丘陵が広がる丘陵部から成るという地域特性。丘陵部には179カ所の土砂災害警戒区域が指定。
河川の氾濫による広域市街地の浸水や丘陵部における土砂災害等の被害が想定される。
②大規模な自然災害が発人命の保護を最大限図ることが最も重要。
防災関係機関と連携し、災害対応力の向上を図る。
区民が多摩区の特性や被害想定を正しく理解し、迅速な行動に結びつくよう、日ごろからの情報発信や意識啓発等に取り組む
③多摩区役所防災力向上方針について
大規模な災害が発生した際には、多岐にわたる膨大な災害対応が求められる。
区役所職員の防災力の向上を図ることを目的に、本年度中に多摩区役所防災力向上方針を策定。
基本方針
1.災害時には迅速に行動できるよう、平時より具体的な準備を行うこと
2.全職員が防災を自分事として捉え、日常的に防災意識を持つこと
基本方針実践のために災害時の業務内容や訓練事例等を盛り込んだハンドブックをあわせて作成
今後これを活用して職員の訓練や研修を実施し、区役所の防災力向上に努める。

吉沢章子
全職員が防災を自分事として捉えるということが大事。
方針を策定し、マニュアルをさらに多摩区版に書きかえて全員が持つ、ということは
現場に即した取組として非常に評価できる。
多摩区の災害特性は水と緑の多摩区であるがゆえに、水の災害もあり、土砂災害もある。このリスクをまず知るということが重要。その為に有効な取組が、まちづくり局の 「防災まちづくり支援促進事業」と考える。①来年度の事業内容は?②多摩区における取り組みと該当地域は?

まちづくり局長
防災まちづくりについて
①防災まちづくり支援促進事業の内容について
地域住民との協働による自助、共助を中心とした防災まちづくりに取り組みながら、地域の防災上の課題の把握とその解決に向けた住民の主体的な取り組みを推進することで、地域防災力の向上を図ろうとするもの。

具体的な進め方は、防災専門家やコンサルタントを派遣し、地域住民が防災上の課題をみずから確認するまち歩きや、その課題解決に向けたワークショップなどを行いながら、防災意識の醸成を図る。地域住民による地区防災まちづくり計画の策定や、その計画の推進に向けた支援を行いながら、建築物の耐震化、ブロック塀の生け垣化等のハード面の改善などを推進する。
②防災まちづくりの取り組み地区について
不燃化重点対策地区を除く火災延焼被害の発生が想定され、かつ大きな焼失被害のおそれのある16地区94町会を対象。
優先順位を考慮し、幸区、高津区、多摩区において実施予定。
多摩区は、西生田周辺の1地区5町会が該当、現在取り組みの実施に向けて町会との調整等を図っている。

吉沢章子
まち歩きは非常に重要である。
高まる災害リスクに対し、肝心なことは「むやみに怖がらず、正しく畏れる」ということである。
第1に、今住んでいるところ、今いるところの地域特性と災害種別に応じたリスクを客観的に知ることが必要で、最もよい方法としては、「地域住民が防災上の課題をみずから確認するまち歩き」であり自分たちの現場を自分たちで知るということが必要であると考える。
第2に、最も優先されるのは「死なないこと」 有事の際に正しく避難するために、避難に特化したパンフレット、避難マップを作成すべき。 まち歩きと避難パンフレット作成について見解は?

総務企画局長
避難マップについて
ホームページのガイドマップかわさきで、津波や洪水等のハザードマップなどを示している。また、作成、配布している各種防災マップ等で難行動を含めて周知している。
川崎市自主防災組織連絡協議会において、自主防災組織の方を対象にリーダー等養成研修を毎年実施。
今年度は各種防災マップを基本に、地震発生時や風水害時等において地域のリスクを把握した上で、参加者一人一人が避難所までの経路などをみずから記入し、オリジナルの防災マップを作成するmy減災マップづくりを実施。
今後も、まち歩きなどにより、それぞれの地域の災害リスクを把握し、正しい避難行動やみずからの身の安全はみずから守るという自助の取り組みが推進されるよう、関係局区と連携し、地域における防災訓練、啓発や研修会等の実施につきまして支援する。

吉沢章子
各種防災マップを基本に、地域のリスクを把握した上でmy減災マップづくり、これは非常に良い。
自分の今いる場所のリスクを複層的に知ることが肝要と考える。
まちづくり局の持つ「防災都市づくり」のデータを有効に活用すべきである。
建物倒壊、火災延焼、急傾斜地対策、津波ハザードマップ、洪水ハザードマップ、土砂災害ハザードマップ、浸水実績図、液状化危険度分布図、等、それらを複層的に重ねる事が出来るデータである。まち歩きをするためのベースとなる資料。
これを引用すれば、災害リスクの高い川崎区は色を重ねていくと、真っ黒になってしまうかも知れない。しかし、その現実を市民が知るべきではないか。これは正しく恐れることについて必要ではないかと考える。
1つのアイデアは市政だよりの区版。このマップをカラーで記載し、あなたの住んでいる地域はこういうリスクがある。だからこういうところに避難してください等、まちづくり局と協力して作成し、配布する事を市長に要望。

今ここ、議場で、地震が起きたらどうするか。ここのリスク管理は最重要。
市長が死んだら大変。まず市長は自分の身を守らなければならない。
吊り天井は落ちてくる可能性がある。委員長は先ずドアを開放。ひずんだらドアは開かない。等々。
どこに自分いるか、そこにはどういうリスクがあるか、ということを市民にもリアルに感じてもらう事が重要である。

まとめ

 

国土強靭化基本法に基づき、「国土強靭化地域計画・川崎市版」を策定すべきであると議会において提案した。本政策提言書には概要版を掲載してあるので参照されたい。 本来、地域計画は県単位までは義務だが、市町村においては努力目標程度である。しかし私は、藤井聡教授の講義を自民党本部の女性議員勉強会にて伺った際、「リスクを洗い直し明確にした上で災害対策を減災の視点で再考する」という計画は、川崎市において必要不可欠であり策定すべきと考えた。その後、川崎市連の政務調査会にて教授を招聘し、市役所危機管理室職員も同席してもらい、地域計画の策定に至った。予算委員会の質問では、多摩区を例に挙げ、多摩区強靭化について質したが、各区版の地域計画は必要であり、今後提案したいと考える。
今回、災害対策を考察し、今、最も必要と感じた事は以下の7項目である。

1.4年後には首都直下型地震が来ると仮定する
2.4年後というリアルな危機感を行政・議会・市民が共有する
3.4年間で出来る減災対策を、取捨選択する。
4.政策判断を明確にし、予算をつける。
5.今年度、見直しを図る総合計画の実行計画に明確に位置づける
6.全庁挙げて、最優先で推進する
7.常に危機感を持ってPDCAサイクルで見直す

この覚悟で臨まないと、150万市民の命は守れないと考える。
藤井聡教授は講演で「覚の士」について述べている。国土強靭化基本法の極意は「葉隠れ」である。侍は、常に刺客に対し備えている。どう切りつけられるか、どう襲われるか、あらゆる危機を想定し、備えるから、死なない。それを覚の士と言う。備えぬ者は「不覚の士」であり、不覚にも死ぬ。川崎市の行政、議会が一丸となって「覚の士」となり市民の命を守る取組を、スピードを持って進めるためにこれからも提言し続ける所存である。

最後に、様々な災害で命を失った多くの方々に対し、衷心よりご冥福をお祈りするとともに、今なお、復興のさなかにあり、ご苦労されている方々に一日も早く安寧の日々が訪れますよう、心からお祈り申し上げます。

 

参考資料・出典

『Voice』2014年3月号 藤井聡(京都大学教授・内閣官房参与)
“東京強靭化”は五輪成功のために必要不可欠だ

内閣府 平成24年度版 防災白書
第1部 東日本大震災を踏まえた災害対策

内閣府 平成28年度熊本地震
内閣府防災情報のページ

内閣府 阪神・淡路大震災教訓情報資料集阪神・淡路大震災の概要
内閣府防災情報のページ

川崎市:川崎市地震被害想定調査結果の概要 (平成25年3月)
川崎市:川崎市国土強靭化地域計画地域計画