【川崎強靭化計画3】感染症×複合災害を乗り越えるために

はじめに

 2020 年3 月11 日、東日本大震災から9 年目のその日、私は市議会の予算審査特別委員会の質問に立った。2019 年10 月の令和元年東日本台風の被害も未だ癒えぬ川崎市。
その中で
ひたひたと新型コロナウイルスの脅威が日本にも及び始めていた。私は「もはや平時ではない」との認識の下、災害も感染症も「危機事象」であるとし、①エビデンスに基づく危機管理と②ビジョンの確立による希望の発信、ならびにそれを具現化する③組織体制の整備ならびに④予算編成を要望した。
その後、新型コロナウイルスは日本はもとより世界中を席捲し、その猛威は未だに止まるところを知らない。2020 年から2021 年は、歴史上類を見ないほどのパンデミックと人類の叡智との闘いとなった。本市においても新型コロナウイルス対策に東奔西走する1年となり、今現在も続いている。
新型コロナウイルスは変異も含めてとても狡猾であり、一筋縄ではいかないと感じるが、災害も感染症も危機事象であり、対する基本姿勢は「正しく畏れ、侮らず」「最悪を想定して備える」であると考える。その信念のもと、この1 年間の感染症や災害などの危機事象に対する政策提案ならびに市議会における議論を本書「川崎強靭化計画・3」に纏めた。「川崎強靭化計画」は2017 年、2020 年に続き今回で3 作目となるが、危機事象に対するレジリエンスの重要性・喫緊性は増すばかりである。風水害、地震、感染症などの災害が複合的に起きることはもはや想定内であり、それに備えることは必然である。現在までもこれからも「命を守ることを最上とし災害死ゼロ」を目指す覚悟である。
このほど川崎市は、国土強靭化計画・地域計画を改定し「かわさき強靭化計画と命名した。
どこかで聞いたことがあるな、と思いきや出典は吉沢章子の「川崎強靭化計画」とのこと。川崎市の計画名となったが、本家「川崎強靭化計画」として今後も研鑚を積んで良策を提言・実現してゆく所存である。

第1 章 川崎市における新型コロナウイルス感染症の状況と対策

新型コロナウイルス感染症対策(検査体制と医療提供体制)について

1 現状
(1)陽性者の状況(令和3 年3 月23 日現在)
令和3 年3 月23 日発表までの累計陽性者数は8,881 人でうち死亡者数は141 人となっている。
1 日あたりの最多陽性者数は令和3 年1 月9 日の226 人となっている。

【発表日別・居住地別年代別の陽性者数】

(2)新型コロナウイルス感染症モニタリング状況(令和3 年3 月23 日現在)
令和2 年6 月9 日[ 集計期間:6 月1 日(月)〜6 月7 日(日)] 以降、週1 回、神奈川警戒アラートの指標等に従った項目を選び、モニタリング状況と評価を公表している。

新型コロナウイルス感染症のモニタリング状況
1 モニタリング状況(参考数値)

2 評価

令和3 年3 月15 日(月)〜3 月21 日(日)(令和3 年第11 週)の川崎市内におけるモニタリング状況は、以下のとおりです。
(1)新規陽性者数は、1 月4 日〜1 月10 日の1123 人をピークとし、前々週120 人まで減少しましたが、前週は125 人、今週は142 人と増加傾向がみられています。
(2)直近1 週間の人口10 万人あたりの累積新規陽性者数も、同じく1 月4 日〜1 月10日の73.40 人をピークに、前々週7.84 人まで減少しましたが、前週は8.17 人、今週は9.28人と増加傾向がみられています。目安基準(神奈川警戒アラート)の2.5 人木満は上回ったままです。
(3)週当たりの陽性者増加比は、同じく1 月4 日〜1 月10 日の2.08 をピークに、前々週0.82 まで減少しましたが、前週は1.04、今週は1.14 と増加傾向がみられ、前週から目安基準1 以下を上回るようになりました。
(4)直近1 週間の感染経路不明者の割合は、このところ40%前後で停滞していましたが、前々週42%から前週は53%、今週は55%と上昇し、前週から目安基準50%未満を上回るようになりました。
(5)直近1 週間の検査陽性率は、前々週3.32%から前週3.66%、今週は4.17%と上昇しました。
(6)入院中の患者数は、直近1 週間の新規陽性者数のピークに2 週遅れた1 月18 日〜1月24 日の週182 人をピークとして減少が始まり、前々週の126 人から前週は117 人、そして今週は93 人と減少が続いています。
(7)入院患者のうち重症者数は、1 月4 日〜1 月10 日の31 人をピークとして、その後減少し、このところ10 人前後が続き、前々週9 人、前週は11 人でしたが、今週は6 人と減少しました。
(8)全療養者数(入院中、宿泊療養及び自宅療養者合計)は1 月18 日〜1 月24 日の2901 人をピークとして減少し、前々週は202 人、前週は190 人まで減少しましたが、今週は206 人とやや増加しました。

関東1 都3 県についても医療体制については、一定の落ち着きを見せてきたため、2 週間延長された緊急事態宣言は3 月21 日をもって解除されましたが、陽性者数としては各地で微増傾向を見せています。
本市におきましても、これまでの陽性者の発生状況は、お正月明け頃をピークとして減少が続きましたが、前遇と今週は指標(1)〜(5)すべてが残念ながら増加傾向となっています。一方、入院あるいは宿泊療養自宅療養者に対する医療は、この3 週間は落ち着きを取り戻した感じです。本市においては、このくらいの陽性者数で若干の増減で停滞するのであれば、入院患者の受け入れと治療、その他の通常医療についても落ち着いた状態で行うことができますが、このまま陽性者数の増加が続く(リバウンド)となると、入院患者数の増加も見られてくるので、なんとか陽性者の急増は避けたいところです。

これまでに多くの市民の方々のご理解とご協力の賜物で、市内の状況は少し安心して頂けるところまできましたが、安心が油断となり、気が緩んでしまうと12 月下旬の状態に戻ってしまうことが心配されるところです。卒業式から入学式、勤務先の異動、桜の開花宣言もありこれから陽気の良い日も増えてきますが、人の増加と感染症の増加はつきものです。どちらかへお出かけになるともあろうかと思いますが、やはり混雑する場所や時間帯はできるだけ避けて、家族単位などの少人数でゆっくりと、過ごされますよう、よろしくお願いいたします。また、三密を避ける、適切な距離が保てないなどの時はマスクをつける、手洗い・手指の消毒をこまめにするなどは、飲食の場あるいは日常生活において、感染の拡大を予防するための基本的なかつ重要な注意点です。引き続きご協力のほどよろしくお願いいたします。

(3)新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言 (令和2 年8 月7 日)で示された指標及び目安からみた川崎市の状況(参考)

手洗い・手指の消毒をこまめにするなどは、飲食の場あるいは日常生活において、感染の拡大を予防するための基本的なかつ重要な注意点です。引き続きご協力のほどよろしくお願いいたします。

2 検査体制等
(1)相談体制
ア新型コロナウイルス感染症コールセンター
新型コロナウイルス感染症に関する一般的な質間・相談を受け付け、市民の不安解消等を図るために令和2 年2 月20 日に設置し、順次受付時間を拡大し、5 月1 日以降は24 時間対応としている。
11 月1 日で「帰国者接触者相談センター」を終了し、「新型コロナウイルス感染症コールセンター」に相談窓口の体制を統一した。相談件数は、令和2 年2 月から4 月にかけて増加し、その後はほぼ横ばいで推移していたが、令和3 年2 月以降は落ち着いている。

<受付時間>
2 月20 日から 3 月6 日 8 時30 分〜17 時15 分(平日)
3 月7 日から 4 月15 日 8 時30 分〜17 時15 分(土日休日含む)
4 月16 日から 4 月30 日 8 時30 分〜21 時(土日休日含む)
5 月1 日から 24 時間対応
<相談件数>

イ 帰国者・接触者相談センター
発熱、呼吸器症状などがある方で、新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合に、「帰国者・接触者外来設置医療機関」を適切に受診できるよう、令和2 年2 月10 日に各区に専用の電話回線を設置した。5 月1 日以降は土日休日を含む対応とし、時間を21 時まで延長して対応している。時間外においては、
(ア)のコールセンターに転送し、コールセンターで対応しきれない案件は職員へ取次ぎ対応している。11 月1 日で「帰国者接触者相談センター」を終了し、「新型コロナウイルス感染症コールセンター」に相談窓口の体制を統一した。
相談件数は、令和2 年2 月から4 月にかけて増加し、5 月以降は月3 千〜4 千件程度で推移していたが、10 月は2 千件程度となった。
<受付時間>
* 2 月10 日から4 月30 日 8 時30 分〜17 時15 分(平日)
* 5 月1 日から8 時30 分〜21 時(土日休日含む)

(2)検体採取
ア PCR 集合検査場
検査体制の拡充を目的として、市内の病院や診療所の医師が検体採取を行うPCR 集合検査場を市内3 か所に設置し、川崎市医師会に運営を委託して実施している。
現在、開設時間は13 時から15 時で、2 か所が週3 日、1 か所が週4 日運営しており、完全予約制で実施している。

ィ 帰国者・接触者外来及び帰国者接触者外来と同様の機能を有する医療機関
帰国者・接触者外来は、帰国者接触者相談センターから紹介のあった新型コロナウイルス感染症疑い患者を適切に診察するために設置する医療機関であって、PCR 検査等のための検体採取等を行う。(令和3 年3 月23 日現在:17 病院)また、市と行政検査の委託契約を締結した各医療機関が民間検査機関に委託又は自施設で検査を実施している。(令和3 年3 月23 日時点で225 医療機関(14 病院、211 診療所※))

これまで1 日当たり最大で1,322 検体(令和3 年1 月4 日)の採取が実施されている。
※集合契約を含む。
<検体採取数(陰性確認含む)>

ウ その他
学校や保育所、高齢者施設などで陽性者が確認された場合の濃厚接触者等の検体採取は、学校医や施設嘱託医等とも連携を図りながら、主に行政医師が行っている。これまで1日当たり最大で257 検体(令和3 年2 月2 日)の採取を実施している。
<検体採取数(陰性確認含む)>(単位:件)

(3)検体検査
ア 健康安全研究所による検査(PCR 検査)
リアルタイムPCR 検査機器5 台を新型コロナウイルス感染症検査用とし、1 日当たり約120 検体の検査を継続して実施できる体制を確保している。必要に応じ検査数を増やすことにより、これまで1 日当たり最大で315 検体(令和3 年1 月19 日)の検査を実施している。

<検査実績(陰性確認含む)>

イ 民間検査機関による検査
これまで1 日当たり最大で1,329 検体(令和3 年1 月4 日)の検査が実施されている。
(ア)PCR 検査
<検査実績(陰性確認含む)>

(イ)抗原検査
令和2 年5 月13 日に保険適用となって以降、増加している。
<検査実績(陰性確認含む)>

(4)搬送支援
感染の疑いのある方及び患者のうち、医療機関までの移動手段が確保できない方々を対象として、専用車両3 台体制で民間事業者への委託により搬送を毎日実施している。
<搬送実績>

3 医療提供体制
(1)本市の神奈川モデル認定医療機関における病床機能別の確保状況

(2)市内病院における入院状況の推移※ 1

(3)今後の病床確保稼働の方向性
県では、第3 波までの経験を踏まえて、今後はより機動的に病床確保が出来るよう、別添のとおり感染状況のフェーズに応じた県内即応病床の目標数を再設定した上、個々の病院の即応病床数について協定を締結することを予定している。これに基づき、本市においては引き続き県と連携しながら、市内における着実な病床確保を行っていく。

(4)宿泊療養施設等の状況
無症状、軽症の方は、宿泊施設ないし自宅で療養しており、令和3 年3 月23 日現在の川崎市在住の宿泊療養者は39 人、自宅療養者は96 人で、体調に変化がみられた際には入院調整等を行っている。
神奈川県内の宿泊療養施設の状況は以下のとおり。

(5)自宅療養者等訪問支援事業
ア事業内容
医師や看護師が、新型コロナウイルス感染症の患者や濃厚接触者となった要介護高齢者等の自宅を訪間し、健康観察や療養相談とともに、可能な範囲での療養生活上の支援を行う。(原則として1 日1 回)
ィ対象者
* 一人暮らしの要介護高齢者等であって、自力で健康観察や保健所への連絡を行うことが難しい方
* 家族と同居する要介護高齢者等であって、サービスの中断等により、必要な健康管理や介護を受けることが出来なくなった方
ウ開始時期
令和3 年5 月から(予定)

出典・川崎市議会健康福祉委員会資料

 

第2章 命のとりで市立病院

災害時における公立病院はまさに「命のとりで」であり、コロナ対策においても全く同様である。
公立病院をはじめ川崎市における災害時の医療体制について指摘・提言を続けている。
2020 年3 月〜2021 年3 月までの提言について以下の通りまとめた。詳細についてはホームページの議事録を参照されたい。

市立3病院・川崎病院・井田病院・多摩病院について

水害に強い井田病院を災害拠点病院へ! (20200923)

※災害拠点病院とは?
災害時にその地域の医療の要となる病院。神奈川県が指定。川崎市には現在6 箇所。しかし6 つのうち5 箇所が浸水想定地域にあることを吉沢が指摘。様々な改善を求めている。

吉沢章子
高台にある井田病院は水害に強い。災害拠点病院の諸条件はクリアしている。風水害に弱い川崎市の災害拠点病院に早急に指定するよう県に働きかけるべきだが?
健康福祉局
災害ごとに優位性を発揮する病院の立地条件等は違う。新たな災害拠点病院の指定について、指定権限を有する神奈川県と協議を進める。
その後→吉沢の発案で、健康福祉委員会から「市立井田病院の災害拠点病院への早急な指定を求める意見書」を本会議に提出→全会一致で可決され、神奈川県に提出。→指定される見通し。

多摩病院の水害対策を! (20200923)

吉沢章子
多摩病院も浸水想定地域内にある。水害対策は?
病院局
非常用発電機に燃料を送るポンプを耐水性の高いものに変え、制御盤を3階に移すための設計を進めており、令和3年度に改修工事を実施する。水害に備えたタイムラインや防災計画の見直しを進める。

市立病院の「存続」が命の砦を守る(20200923)

① 多摩病院の課題と今後について

吉沢章子
川崎市初の「病院の指定管理」から14 年。指定期間30 年の折り返しを迎えた。現在までの良い点・悪い点、総括と今後は?
病院局
良い点→①北部地域における救急医療の充実②地域の医療機関との連携強化③指定管理者の聖マリアンナ医科大学附属病院が近くにあり、危機事象における医療のすみ分け、連携がしやすい。
悪い点→①職員の接遇②診療の案内や説明情報の不適切などに電話・手紙での御意見・苦情がある。
課題を共有し、患者サービス向上に努めるよう指導する。多摩病院の今後について、指定管理者制度を導入している他の病院の指定期間終了に向けた取組状況等を調査する。
吉沢章子
→経営形態を含め徹底した調査を要望。敷地が狭く、改築や災害対策も困難。知恵を絞って課題解決を全力でと指摘。

② 患者満足度調査による経営改善を

吉沢章子
評価が低いのが「入院時の食事」。多摩病院では満足度50.3%。改善すべきだが?
病院局
食材や献立の見直しなど改善に努めた結果、川崎病院・井田病院で満足度が改善。市立3病院間で情報共有しながら、患者満足度の向上に努める。
吉沢章子
評価が高いのが「医師・看護師」。ダ・ビンチ(手術支援ロボット)を使いこなせる数少ない名医など、市立病院にはかなりの名医がいる。セールスポイントである医師を可能な限り広報すべきだが?
病院局
医師による市民公開講座の動画による配信を開始。ホームページや動画配信等も積極的に活用しながら広報に努める。

③ 井田病院の可能性について

吉沢章子
コロナ後も感染症は人類が向き合わざるを得ない大きな課題。感染症対策病院としての可能性は?
病院局
結核病床40 床は現在コロナ専用病棟として一時的に運用中。今後、感染症対策における国や県の動向を注視したい。
吉沢章子
「在宅療養後方支援病院」として、緩和ケア病床を持ち、ターミナルケア、終末期医療などのノウハウを蓄積している。今後もニーズが拡大される分野。市民への安定した医療提供を要望。

コロナと闘う現場への支援を!  (20201217)

百聞は一見に如かず。有事下における多摩病院・井田病院などの現場へ伺い、その声から提言!

① 吉沢章子:実現すれば日本初。全病棟をビジネスホテル並みのWi-Fi 環境に!
その後→多摩病院:3 月に全室Wi-Fi 整備完了。 川崎病院:コロナ病棟整備整。他も拡大予定。
井田病院:整形外科・コロナ・緩和ケア病棟は整備済。拡大検討中

② コロナ病棟へ清掃員を!就労支援と一石二鳥で。
吉沢章子
看護師が清掃を担っている。雇い止めなど市民の現場も経済的にひっ迫しているので就労支援としてのマッチングや異業種連携を図るべきでは?
病院局長
対応可能な市内の団体と調整中。マッチングも検討する。
その後→多摩病院:3 月から清掃業者が入る。川崎病院:一部補助あり。拡充検討。井田病院:検討中

③ 看護師さんに休暇を!
吉沢章子
複数の病院で連携し順番に休暇を取ることを提案。休床補償も活用すれば一石二鳥では?
健康福祉局長
特定の病院に負担がかからないよう、市内医療機関で役割分担し、休床補償の活用も呼びかけ、コロナ治療に関わる医療従事者等の勤務環境や福利厚生の改善向上に取組む。

④ 応援をかたちに!
吉沢章子
「応援は力になる」とのこと。横断幕・バナーフラッグなどを主要駅に展開してはどうか?医療従事者への感謝と市民の感染対策への意識啓発の一石二鳥だが?
健康福祉局長
関係局と連携して検討したい。

病院局への提言(20200923)

・南部医療圏の3 病院は全て浸水想定地域内というハイリスクな状況。各医療機関が出来る事、出来ない事をはっきりさせ、その上で分担と連携を考え、早急な災害時の医療体制の抜本的な見直しが急務と指摘。
・コロナ下で、公立病院の重要性は再認識されたが、同時に今後さらに厳しい経営が予測される。強みを徹底して活かし、それを広め「選んでもらう」ことで経営改善につなげるべきと指摘。
・事務部門の不祥事も相次いでいる。病院は命を預ける場所。最後の砦としてふさわしい人であり施設であることを再度、肝に銘じ最善を尽くしていただきたい、と病院局長へ要望。

 

 

第3 章 コロナ×災害

危機事象における総括について(20200625)

吉沢章子
コロナウイルスの第2波、出水期に伴う水害などの対策が求められる中、現在までを徹底検証した上で、最悪を想定し、先手を打つことが必須。また、その先を見据えた持続可能な都市経営もまさに岐路に立っている。現時点における危機事象の総括について、並びに今後の都市経営のビジョンについて伺う。
市長
令和元年東日本台風の教訓として、想定されるリスクを把握し、災害のフェーズに応じた対策を複数用意するとともに、事態の展開に応じて柔軟に組織運営を行う必要性を改めて認識した。新型コロナウイルス感染症対策においては、本部会議の下に課題ごとのプロジェクトチームを設け、感染者の発生状況や国の対策、方針など、急な状況変化を捉えながら機動的に対応してきた。このたびの新型コロナウイルス感染症は、今も私たちの日常生活から企業活動に至るまで、社会全体に様々な影響をもたらしている。今後、引き続き感染拡大の防止、医療体制の整備、経済の回復に向けた市民、事業者への支援等に全力で取り組むとともに、今後の社会変容を見据えながら、持続可能な市政運営に取り組む。
吉沢章子
災害対策も都市経営も後手後手になっては市民の命を守れない。先手必勝での取組をぜひお願いする。

コロナ×災害の想定について(20210310)

吉沢章子
東日本大震災から10 年を迎える。この震災の余震である福島県沖地震が起きた。残念ながら、現在、人類は地震の活動期に生きている。川崎市の置かれた状況を考察すれば、少なくともあと10 年は東日本大震災の余 震の影響下にあり、首都直下型地震は明日来てもおかしくない。風水害も年々激甚 化しており、今年、多摩川が氾濫しても何ら不思議はない。そして、それらがコロナ禍で起きない保証は全くない。激甚災害ウィズコロナはもはや想定内。「かわさき強靱化計画」が示されたが、感染症下における激甚災害を「起き てはならない最悪のリスクシナリオ」として認識・想定しているのか、死者数 の想定、対策なども含めて伺う。
危機管理監
近年の災 害の激甚化、頻発化や新型コロナウイルスの影響を踏まえ、複合災害への備えは喫緊の課 題であると認識。減災目標としての死者数は、震災対策に係る 目標として設定しているものであり、感染症の影響による要素は算定していない。リスクシナリオは、医 療施設及び関係者の絶対的不足、被災、支援ルートの途絶、エネルギー供給の途絶による 医療機能の麻痺、被災地域における疾病、感染症等の大規模発生、新たな感染症の感染拡 大等を設定、災害拠点病院の機能強化や災害時における医療救護体制の整備の推 進等に取り組む。
吉沢章子
→想定は固定的ではなく、常に最悪を想定してブラッシュアップすることが鉄則と指摘。

コロナ下の災害→ D-MAT が来ない。行けない。(20210310)

コロナ下では医療従事者も病床も全く余裕がなく、災害が起きたら、災害時医療派遣チームD- MATは全国的に組織できないのではないかと疑問がわき、質問。

吉沢章子
激甚災害では「未治療死」や「災害関連死」が報告されている。「未治療死」は災害からは助かっても、医療資源などが乏しい現場で、治療を受けることが出来ずに命を落とすことを指し、首都直下型地震の国の算定死者数2 万3000 人には含まれていない。試算では発災後8 日で7400 人に上るが、これはコロナ下の数字ではない。コロナ対応でただでさえ救急病院や救急対応可能な医療従事者が枯渇し、さらにワクチン接種などで、人も場所も全国的に全く余裕がない中で災害が起きたら、市内でD – MATを組織することはおろか、市外からも簡単には来てもらえない。さらに市内災害拠点病院6病院のうち5 箇所が浸水想定地域内にあり、水害の場合、拠点病院が機能しなくなるというさらにハイリスクな状況が容易に想定できる。最悪の事態への認識と対策について伺う。
危機管理監
コロナ禍に おける大規模災害は、想定される多数の外傷者への対応と感染防止対策との両立 が必要。大規模災害時において市災害対 策本部内に保健医療調整本部を設置し、市内全域の医療ニーズ及び人的・物的医療資源を 迅速かつ的確に把握した上で、効率的、効果的なマッチング機能を一元的に発揮できる体 制を整備し、病院等との連携訓練などを計画的に実施している。また、 市内医療機関が被災により機能不全に陥った場合には、人員や物資の投入による機能回復 や生命の危機にある患者の他院への搬送などを行うとともに、市内の医療資源だけでは対 応できない場合には、県内、県外との広域的な搬送調整や受援等を想定。今回のコロナ禍においては、これまで培ってきた仕組みや経験、さらに、医療機関との顔の 見える関係を活用して、県及び市が連携しながら感染拡大防止策に留意した医療調整等を行っている。ここから得られた知見を今後生かす。
吉沢章子
病院局、健康福祉局、危機管理室ともに考えて答弁頂いた。庁内はもとより様々な主体と顔の見える関係を続け連携を深め、未治療死を防ぐために「知見を生かして」さらなる取組を。
ハード的には国の国土強靱化5か年計画の予算、また厚労省のDMAT育成予算、神奈川県の 医療提供体制の整備補助金などの活用も含め、使えるメニューをチェックし 国・県とも協議調整を。

東京大学DMTCとの連携について・1(20210311)

吉沢章子
東京大学大学院のDMTCによる47 種の災害対応業務フレームワークを活用して、検討事項を一覧化する検証シートの作成について12 月議会で提案。災害時、適切な判断と対応ができる人材育成が急務として、DMTCが行う災害トレーニングを受講すべきとも提案したが状況は?
危機管理監
東京大学大学院の災害対策トレーニングセンターが定義する災害対応業務の47 種のフレームワークは、組織運営から始まる8つのカテゴリーで構成されている。検証報告に当たり、参考とさせていただくことについて、センター長に確認している。次に、検証作業につきましては、時間的制約がある中で、横断的かつ体系的に課題解決の方向性等を整えながら進める必要があり、適宜、総務企画局内で応援体制を組みながら対応している。トレーニングセンターが提供するトレーニングプログラムの活用について、災害対応における人材育成は、本市のみならず、行政の共通課題であり、現在九都県市の危機管理担当の受講に向けて調整を進めている。
吉沢章子
非常に合理的なスキーム。センター長と調整を。人材育成について、九都県市での受講は非常に有効。ぜひ早期実現を。政府・与党内でも防災省を設置して、都市によって災害対応のレベル差がないようにというような意見も出ている。それはあるべき姿。まず九都県市から、私どもが始められるのはとてもよい事例。今日はキックオフの日と伺っている。しっかりとトレーニングをしていただきたい。

東京大学DMTCとの連携について・2(20210625)

吉沢章子
東京大学DMTCでは、コロナウイルス流行下における避難・避難所対策のためのジレンマ集を出されている。これに基づき、岡部医師の知見を生かしつつ検証されていると聞くが、現状と避難訓練の可能性について伺う。
危機管理監
新型コロナウイルスに対応した避難訓練について、現在、避難者の健康チェックの手法や避難スペースの活用方法など具体的な検討として、災害時の避難所運営に関する新型コロナウイルス感染症対策マニュアルの作成を進めている。区役所など対応に当たる現場の不安や意見を聞き、感染症に対する共通理解を得ながら進めるよう、専門家の知見を生かす機会を設けるなど、工夫を凝らしながら取り組んでいる。また、DMTCジレンマ集にあるような課題についても、既に検討課題として認識している部分もあり、今後、一定程度の整理を行い、対応していく予定。避難訓練についても、作成したマニュアルを活用しつつ各区における防災訓練の機会等を捉えて、複合災害に対応するよう実施するとともに、外部リソースの活用も併せて検討する。
吉沢章子
避難所での想定を書き出していて、今、巻物状態だということを伺っている。徹底した検証により「川崎モデル」となるよう期待する。

↓ 避難訓練実施!

コロナ×災害・第1 回避難訓練@中野島小学校(20200806)

東京大学大学院・災害トレーニングセンター(DMTC)との連携を提案し、実現。災害→DMTC監修、感染症対策→岡部信彦医師監修(川崎市保健安全研究所・所長)のもと「災害時の避難所運営に関する新型コロナウイルス感染症マニュアル」に基づく第1回目の避難訓練が中野島小学校で実現。

相馬市の避難所運営に学ぶ職員の育成(20210310)

吉沢章子
危機事象に迅速に対応するには、最悪の想定から逆算してマネジメン トするという基礎知識に裏づけされた臨機応変な思考力、判断力、行動力が不可欠。福島県沖 地震における相馬市の神対応に学ぶべき。相馬市では2月13 日23 時8分:地震発生 → 23 時30 分(22 分後):災害対策本部設置 → 零時(52 分後):避難所設置、という迅速さ。さらに素晴らしいのは、市長が指示する前に職員が行動していたおり、避難所内のテント購入についても職員の提案とのこと。職員の育成について、かねてより提案してきたが本市職員の現状について伺う。
危機管理監
職員の災害対応能力について本市では、 熊本地震等を踏まえ、職員が常に防災意識を高めながらキャリアを重ねていくことができ るよう、新人職員研修や階層別研修に危機管理の講座を追加し、総合防災訓練の各区複数 回化や各局訓練の充実を図る取組などを進めてきた。しかしながら、東日本台風 では、避難所運営等、職員の災害対応によって混乱が生じた事実もある。改善 に向けてマニュアルを整備し、職員研修や実地訓練等を重ねている。また、九都県市において、災害対策本部事務局を支える職員の災害対応力の向上が 課題となり合同で研修を実施した。新型コロナ ウイルス禍の災害対応においては、感染症を正しく理解し行動することが求められており、 これまで以上に職員、組織、それぞれが日頃から主体的に考え、行動し、備えていくこと が必須となるので、危機感を持って取り組んでいく。

全ての施策に防災・減災のフィルターを(20210310)

吉沢章子
国土強靱化基本法は法律の最上位に位置するアンブレラ法。本市においても、切迫する危機事象に徹底的に備えるべく全ての施策に防災・減災のフィルターをかけると 同時に、機動的な組織体制を構築し、総合計画の第3期実行計画策定において も反映すべき。見解を副市長に伺う。
伊藤副市長
第1期実施 計画期間において総合防災訓練を各区複数回化し、地域の主体性を引き出す訓練に転換を 図り、第2期実施計画期間では、危機管理監を設置し、危機管理体制及び職員の災 害対応能力の強化を進める中で、東日本台風を経験し、また、新型コロナウイルス感染症 にも対処してきた。令和4年度からの第3期実施計画においても、危機事象への備えを着実に進めるため、新型コロナウイルスへの対応をはじめ、震災や 風水害への対策などについて各局区の主体的な取組を危機管理室が下支えし、機動的かつ 柔軟にそれぞれの組織が有する強みをつなぎながら、地域の主体的な活動や外部リソース も適切に活用して推進したい。
吉沢章子
災害は激甚化・複合化し事態は非常に切迫している。危機感を持って危機管理室が下支えする徹底した対策を要望。

第4章 減災対策は自助も公助も

my 減災マップで「自らのリスクを見える化」 (20210310)

吉沢章子
現在のような危機事象下において命を守るには、公助とともに 自助が非常に重要。けがをしない、死なないということは、医療資源を 圧迫しないということにつながる。自分の命を守るということは人の命も守ることでもある。災害種別のハザードマップの複層化を 提案し、現在ホームページレベルでは可能になっている。このたび内 水氾濫のハザードマップも完成しリンク可能となったが、その先の発展を懸念していた。多摩区の磨けば光る多摩事業で減災ラボさんのmy減災マップを体験した。自宅の複層的なハザードが一目で分かる素晴らしいもの。全市的な活用を提案する。マイ・タイムラインとセッ トで、市民が楽しみながら訓練すれば、 災害死ゼロを目指すことも不可能ではない。早急に対応すべきだが見解を伺う。
危機管理監
新型コロナウ イルス禍において、災害のケースに応じた避難行動の検討と、マイ・タイムライン を活用した避難行動計画の作成が求められる。my減災マップは、自ら手を動かしてマップを作成することで、現実感を持って地域のハザードを捉えることができ、また、ワークショップでの意見交換等を通じて、自助、共助の備えにつながるという点で意義があるものと考える。まずは、これまでの活用による効果や地域でのニーズ等 を確認し、関係局区と連携して検討を進める。
吉沢章子
高津区では、区の危機管理担当が学校においてmy減災マップ作成ワークショップを開催している。防災・減災教育とともに、地域の歴史や地層など、学びの幅も広が り、教材としての汎用性も広く、大変好評と伺う。教育の場でこそ活用すべきだが見解を伺う。
教育長
自分が生活する地域の 防災マップづくり等を通じた防災教育は、危険箇所や備え等について考え、危険を予測す ることで危機回避能力の育成につながる有効な取組の一つとして認識している。今後も、関係局区等との連携を図りながら、子どもたちが防災意識を高め、命 を守るための主体的な態度を身につけることができるよう、効果的な教材や手法の学校へ の周知なども含め、防災教育の充実を図る。

減災・治水対策としての上河原堰・老朽化対策(20201005・20210310)

※上河原堰とは?
所在地は多摩区布田。 二ヶ領本川の流域の農地をかんがいするために、多摩川からの取水を目的として造られた施設。昭和46 年に改築。

(20201005)
吉沢章子
農作物の耕地面積は著しく減少し使われない用水路が増えている。まJFE(旧日本鋼管)の撤退により工業用水の需要も不確定。さらには河川内の構造物である堰そのものが、堆積土砂を呼ぶ治水上の障害物ともいえる。老朽化対策も含め、上河原堰の今後について見解は?
藤倉副市長
本市にとって大変重要な施設。老朽化に加え、利用水量の減少が進んでいることから、施設の更新に向けて、規模の見直しを含めた検討を行う。
吉沢章子
下流部には宿河原堰もあり、土砂が堆積しやすい特性がある。宿河原堰を含めて、利水と治水と双方の観点から検討し施設更新を要望。また、上河原堰の調布側は国直轄、川崎側は川崎市管理という不思議な構造物。危機事象対策として費用負担について国とも是非協議を。

(20210310)
吉沢章子
上河原堰の老朽化対策 並びに利水・治水対策を提案した。検討結果について藤倉副市長に伺う。
藤倉副市長
上河原堰は、多摩川から二ヶ領本川上河原線へ取水し、かんがい用水に加え、工業用水道として稲 田取水所を経由し、本市臨海部などに供給する役割を担っている。施設の老朽化に伴 い、様々な更新の検討を行ったが将来的にも稲田取水所からの取水が必要なこと、二ヶ領本川上河原線の河床高を変更することが難しいことなどから、施設規模の縮小や見直しが困難であると判断。今後、既存施設の長寿命化を目指し、最も経済 的な耐震補強や補修を実施していく方針で設計に着手する予定。
吉沢章子
検討の結果、「長寿命化」との結論で設計着手の予算計上もしたとのこと。早急な対応を評価する。流域治水にも大きく影響する構造物であり、今後も注視し議論を続ける。

多摩川の治水対策・多摩区の浸水対策について(20200311)

吉沢章子
台風19 号の被災地である多摩区は、浸水地域や土砂警戒地域への警戒感が強く、防災意識が高まっている反面、不動産売買への影響も出ている。武蔵小杉が住みたいまちランキングの9位から20 位に大きく順位を下げたことでも明らか。歳入の45%を占める市民税のうち、法人税が減、固定資産税が増となっておりますけれども、多摩川に沿う本市は災害対策をしっかりと講じ、安全を確保することによる安心を提供しないと不動産売買も停滞し、結果、人口も税収も減ずることになる。新型コロナウイルスの報道において、罹患者数と同時に回復した人の数を知りたいという声を伺うが、同様に警鐘を鳴らすハザードマップとともに、安全対策を具体的に示して広報することが肝要。12 月議会において、五反田川放水路の付加価値の提案に答弁頂き、今般の予算に計上されているが、13 万立米の水を貯留することでカバーできる範囲等について伺う。また、多摩区における浸水対策について、これまでの取組と今後について、及びそれらを分かりやすく広報することについて伺う。
建設緑政局長
五反田川放水路の暫定運用について。令和5年度の完成を目指し施工中。近年の豪雨災害の発生状況を踏まえ、事業効果の早期発現を目指し、一部完成している施設を活用して、本年6月から暫定的に貯留式で運用を開始する。運用に伴い、台風や大雨などにより五反田川の水位が上昇したときに、洪水の一部を整備済みの施設に流入させ、最大で約13 万立方メートルの洪水を貯留することで、分流部下流域の浸水被害軽減に寄与するものと考えている。市民への周知は、暫定運用に併せ、分かりやすく浸水被害の軽減効果等を伝えられるよう検討を行った上で、ホームページ等を活用して広報する。
上下水道事業管理者
多摩区における浸水対策について。これまで登戸地区の約239 ヘクタールや、宿河原地区の約124 ヘクタールを対象に、国の下水道浸水被害軽減総合事業に位置づけ、時間当たり92 ミリの既往最大降雨の際にも床上浸水とならないよう、雨水幹線や雨水管渠の整備により対策を進めてきた。また、平成28 年度に重点化地区に位置づけた三沢川地区の約197 ヘクタールのうち、下水道の整備が必要となる約148 ヘクタールについて、昨年度、国の制度に位置づけ、同様の対策を推進し、現在、菅北浦地区においてボックスカルバートの敷設工事を進めている。市民の皆様に浸水対策の取組について御理解いただくことは重要であり、全戸配布の広報紙「かわさきの上下水道」において、対策内容や浸水への備えなどを分かりやすく説明し、広報に努める。
吉沢章子
内水氾濫のハザードマップも令和2年度中に出される。併せて雨水幹線図なども示し、安心要素を広く広報することが肝心。五反田川放水路は広報するとのこと。ホームページだけでは分からないので回覧板など、紙媒体での広報も要望。

治水対策と安全の発信について(20200311)

吉沢章子
河川事業と下水事業は治水という同一線上にある。検証において双方の見解の相違を超えて協力し、隠蔽や虚偽が疑われ、市の信用が失墜することのないよう徹底した検証と原因究明を求める。また検証の先に希望がなければ市民の安心にはつながらない。災害対策は、市民の生命はもちろん、市内経済にも直結する最優先の課題。多摩川流域の治水において、本市の役割を常に俯瞰しつつ、国、関係自治体と連携し、しゅんせつなどの安全の確立と発信をあらゆる機会を通じてすべきだが市長の見解を伺う。
市長
多摩川の治水対策について。先日、大田区、世田谷区と連携し、多摩川における治水対策の推進について、国土交通大臣に要望を行った。そこで大臣から、水害対策は自治体ごとに対応するのではなく、国を含めた流域全体で取り組まなければならないという認識が示された。引き続き、多摩川の治水対策について、河川管理者である国と流域自治体が連携して治水安全度の向上に取り組むとともに、適宜市民の皆様へお伝えする。
吉沢章子
危機事象におけるトップの発信が、いかに状況を左右するかは昨今の状況を見ても明らか。可能な限りの安全を確立するとともに、トップである市長が希望を発信することを要望する。それが市民の希望となる。また、多摩区は特に用水路敷も長く、非常に複雑な水域を持っている。下水も河川も治水という観点から同一線上にあり、組織としても同一が非常に望ましい。下水道局を元の建設緑政局に戻すことを是非検討頂きたい。

多摩川の治水対策について(20200625)

吉沢章子
災害対策は先手必勝。国は、多摩川の土砂掘削などで合計198 万立米を確保し、同時に小河内ダムをコントロールすることによって令和元年東日本台風クラスの出水に耐えられるとの見解。しかし、掘削が終了するのは令和6年度。それまでは堆積土砂により、多摩川の流量を確保する有効断面積が確保されていない状況と考えるが見解は?
建設緑政局長
多摩川における堆積土砂の撤去について。令和元年東日本台風において甚大な被害が発生した多摩川流域における今後の治水対策として、国土交通省が令和6年度までに多摩川の計画高水位を超過した水位観測所の範囲を中心に約198 万立方メートルの掘削を実施。この掘削により、令和元年東日本台風と同規模の洪水に対して、水位を低下させるために必要な断面を確保する。今後も早期の実施を働きかけるとともに、国や多摩川流域の自治体と連携し、多摩川の治水安全度の向上に取り組む。
吉沢章子
早期の実現要請を要望するが、今年の出水期は堆積土砂により有効断面積が確保されていないということは明らか。ハザードマップよりもさらに危険側にある。基本認識として周知徹底すべきだが見解を伺う。また、多摩川の水位予測について、荒川のシステムを導入するとのことだが期待できる効果は?
危機管理監
本市は多摩川と鶴見川に挟まれ、北部には丘陵地帯、南部は海に面するなど、多様な自然環境の中に位置し、想定される自然災害も、地震、洪水、土砂災害、高潮、集中豪雨による浸水等がある。令和元年東日本台風における多摩川の高水位を受け、河川管理者である国に対して流域的な対策を求めてきた。国では多摩川緊急治水対策プロジェクトを公表し、河道掘削をはじめ、小河内ダムの事前放流等、治水対策を進めている。一方で、今回の新型コロナウイルス感染症拡大により、これまでの計画に加えて、感染症対策を加味した複合災害へも対応していかなければならないと考えている。ウィズコロナ時代の避難行動の在り方として、浸水想定区域からの避難や、浸水想定区域内であっても想定浸水深より高い居住者は、備蓄等を準備した上で自宅にとどまるなど、避難所以外への避難方法についても積極的に周知していく必要があると考えている。また、多摩川の水位への影響という視点での広域的な予測については、国が平成30 年7月より荒川流域自治体へ提供している「水害リスクライン」が多摩川流域自治体へも提供されることになり、これにより避難等のリードタイムの確保が図られるなどの効果が期待される。
吉沢章子
「水害リスクライン」によって避難のリードタイムが確保できる。これは希望が持てるが、現状の厳しさを常に踏まえて、さらに先手を打つ対策の展開を。

これから

気候変動による豪雨災害、活動期に突入している巨大地震の脅威、そして世界規模での 新型コロナウイルスの蔓延など、今まさに人類は存亡の危機に直面している。地震は定期 的な地球の生命活動だが、気候変動や新型コロナウイルスの蔓延は、人類の行き過ぎた行 動が要因の一つであることは否めない。私たち人類は、誰もが自らを見直し、行動変容する岐路に立ち、そしてそれがラストチャンスであることを自覚すべき時が来ている。しか しそれは手遅れでもなければ、それほど難しいことでもない。一人一人が意識を変え、行動を変えることによってパンデミックが収束に向かうように「先ずできることから始める」 ことが肝要である。新しい生活様式をできる限り取り入れること、豪雨の予報が出たら危 険が迫る前に逃げること。逃げる場所を決めておくこと。備蓄をしておくこと。家族の連 絡方法を確かめることなど、基本の心構えは「むやみに怖がらず、侮らず、正しく畏れ、 備える」ことであり、それを実行することである。自らの命を守ることは、他の命を守る ことに繋がっているということを、「my 減災マップ」を使い、さらに多くの人に伝えた いと考える。
コロナ下で相馬市が地震に見舞われた。心配と同時に私には安心感があった。なぜなら 相馬市長は災害対策のスペシャリストとして尊敬して止まない立谷市長であり、万全の対策を迅速な対応で実行されると確信していたからである。そして、想像以上の迅速さと正確で万全の対策を取られたのである。職員の行動も素晴らしく目を瞠るものがあった。 そこで相馬市の事例を議会で取り上げさせて頂いた。
よく「川崎市は153 万人の大所帯だから」という言葉を耳にするが、それを言い訳に するのは笑止千万である。要するに「やる気」の問題であり、規模の大小ではない。 有事下にある今、ますます政治の覚悟と決断が問われている。そして自治体はそれぞれの「やる気」によって残念ながら大いに差が生じている。「命を守る」ことを最優先に覚悟を 持って決断してゆくことが、あらゆる危機事象を乗り越える肝である。
危機はすでに起きている。そして更なる危機は科学的根拠からも迫っていることは明ら かである。
危機事象に対する提言を行い、共有し、実現してゆくことが自身の大きなミッションと 観じ、今後も調査・研究を深め、議会・委員会はもとよりあらゆる機会を捉えて臨んでゆ く所存である。希望をもって。

東日本大震災から10 年目の3 月、ご多忙のなか快く資料をご送付頂き、議会で開示す ることを許可して下さった全国市長会会長・相馬市長立谷秀清氏に心からの敬意と感謝を 申し上げる次第である。

川崎市議会議員
吉沢章子